口笛嫌い
私は口笛の音が子供の頃から大嫌いだ。
私のイメージでは、
口笛は、にくたらしいくそガキが、
自分のしたいたずらをごまかす時にする行為だ。
子供の頃に見た漫画やアニメのワンシーンで、
よく目にしたものである。
残念ながら、これまでの実生活において、
そのような場面を見たことがないが、
多くの漫画やアニメで描かれているからには、
現にそのような事実傾向があるからに違いないのだろう。
問題は、そこで描かれるクソガキどもだ。
大抵は、私が最も忌み嫌う種類の子供達であり、
そのようなタイプの子供は、
小学校の同じクラス、同学年に必ず何人かいたものである。
当時私も子供ではあったが、
私と彼らの間には、
決して渡ることの出来ない断崖絶壁があった。
子供でありながら、かなりませていた私は、
あの手のガキの行動・発言に知性を全く感じず、
その存在価値すら無いと感じていた。
(今でも、そう思っているが。。。)
私の気持ちを敏感に察知した彼らとは、
ねんがら年中、けんかやつばぜり合いをしていものである。
このような経緯から、
アニメで口笛
↓
クソガキ
↓
現実のけんか相手に似ている
↓
知的でない子供
という関係連鎖によって、
口笛=知性が低い、下劣、品がない
という私の固定観念が形成されたのだろう。
小学校以来、私は口笛を聴くだけで悪寒が走るようになった。
背筋が寒くなって気分が悪くなるのだ。
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社会人になり、ジャズを本格聴き始めてから、
「口笛」に関連して非常に辛い選択をしたことがある。
ハーモニカ奏者のトゥーツ・シールマンスは、
口笛をアルバムやライブで吹くからだ。
しかも、必ず口笛で吹く定番の曲があって、
ライブのアンコール曲にまでなっているのだ。
以前、青山のブルーノート東京に彼のライブを聴きに行った時、
アンコールで会場の客全員がトゥーツじいさんと口笛で合奏して、
盛り上がっていたが、私だけは冷めてしまった。
私は、ジャズ・ハーモニカの切ない音色が大好きで、
ジャズ・ハーモニカと言えば、
「トゥーツ・シールマンス」しかいないという現実もあり、
彼のアルバムは手に入るものはほとんど買い揃えた。
だが、それらのアルバムの中で、
トゥーツじいさんが口笛で例の定番曲を吹いているアルバムが
何枚かあったのだ。
その定番曲と数曲以外は、
口笛は吹いていないので、
ハーモニカの哀愁漂う演奏が満喫できるのだが、
口笛の曲が始まった途端、
私の極上の気分は一転して最低なものになった。
天国から地獄とはまさしくこのことだが、
たった数曲の口笛の為にアルバム全体のイメージが悪くなる
のは非常に悔しかった。
この数曲さえなければ最高なのに。
私は、トゥーツじいさんが恨めしかった。
MDやDATにダビングして聴けばいいのだろうが、
MDはCDに比べてはるかに音質が落ちるし、
DATはプレーヤーが高価で、早送りやランダム再生ができない
という扱いにくさがあった為、選択対象にはならなかった。
結局、この口笛演奏の入ったアルバムを、
聴くか、聴かないか
という二者択一しか残されていないのだ。
もちろん、私は、聴くのをやめた。
アルバムは中古CD屋に売ってしまった。
今でも時々思い出しては、
ちょっともったいないことしたかな?
と後悔することがある。
だが、やむを得ない選択なのだ。
私は、それらのアルバムを中古屋に売る前に、
何度も挑戦し直したが、ことごとく退散せざるを得なかった。
生理的に口笛の音は私には合わないのだ。
無理に自分を合わせようとすれば、
私の精神の方が破壊されてしまうだろう。
そこまでして聴くべきだろうか?
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私がここまで、口笛嫌いなのは、
小学校のクソガキどもだけが原因ではない。
自転車に乗りながら口笛を吹くオヤジがいる。
大抵は知性が低い、下劣、品がない
と思えるような容姿、顔立ち、服装をしているのはなぜだろう?
口笛を吹くか吹かないかで人間のタイプが分かれるのは、
口笛を吹くのは、高貴な者、知的な者のすることではない
という価値観が存在し、
それが実際に実行されているからではないだろうか?
会社で仕事をしながら口笛を吹く奴がいた。
やはり、知的ではなかった。
私が子供の頃は、
夜に口笛を吹くと蛇が来る
と親から言われたものである。
本当に蛇が来るなんて信じてはいなかったが、
口笛を吹く行為が「美しい」ものではないことは、
子供の感性ながら、私ははっきり感じ取っていた。
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音楽としての口笛を考えてみた場合、
トゥーツじいさんの口笛はまだましな方だった。
自転車に乗りながら、
あるいは酔っ払いながらふらふらしながら、
オヤジが吹く口笛。
99%以上、醜悪な場合が多い。
何がどう醜悪なのかと言えば、
ビブラートを効かせ過ぎなのだ。
あの独特の
振幅(高低)が広く、間隔が狭い
サイレンのようなビブラートが、
私の美的感覚を破壊しようとする。
なぜ、あんな醜いビブラートをかけるのか?
もっと自然な美しく繊細なビブラートはかけられないのか?
サックス演奏で使うビブラートでは、繊細さが要求される。
振幅についても、徐々に狭くするといった自然さが必要だ。
やはり、オヤジの口笛を聞くと美意識を疑わざるを得ない。
心から美しいと思えるような口笛は、
果たしてこの世に存在するのだろうか?
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流 音弥
2004年5月20日







